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2006/08/11

太陽(20060811)

2006taiyoイッセーさん、すごかった…。

戦後生まれの自分でも、テレビで報道される「昭和天皇」の雰囲気は、知ってたから。観察というのか、研究というのか、ソクーロフ監督をして「日本の宝物のような俳優」とまで言わしめたのもうなづける。

「あ、そう」のタイミングも、質問をはぐらかすようなタイミングも、手袋をはめた指先にまで、「(昭和天皇の)ひととなり」が現れていたよう。

尋常の人間では、とうてい耐えられない状況を克服するだけの器量が、そなわっていたのだと感じた。堂々と、余裕すら感じさせて、泰然自若のようにさえ見える。

セピアの色調で、常にフィルタがかかっているような画面だった。空襲のイメージ(夢に出てくる)は、爆撃機が魚になっているうえ、水で濡らしたフィ ルタがかかったような映像だったが、妙に現実味を帯びている。全体として暗い印象だが、コミカルなシーンもあってなごませてくれる。それは、きっと昭和天 皇ご自身の持つものによるとは限らない。人間が、ひとりの人間を特定して「神」に祭り上げる(または、祭り上げられる)ことの滑稽さが、滲んでいるからだ とも思う。

あのような方でなければ、あの時代は、乗り越えられなかったのかもしれない、と思わせる。監督は、とても好意的にみていると思われる。これもまた、 不思議なアングルで撮影されているところがある。だが、そのシーンは、どこを切り取ってもスチールに使えそうなものだ。ロシアの監督をして、ここまでの作 品を製作できた。 『ヒトラー~最後の12日間』をドイツの監督が製作したように、いつの日にか日本でも、日本人の監督がこうした作品にチャレンジできるようになるのだろう か。

皇后(桃井かおり)との会話のシーンは、本当にそうであったかのようだった。
『ヒトラー~最後の12日間』での、ブルーノ・ガンツに負けない、イッセー尾形だった。

「(神ではなく)人間です」と宣言すること自体、おかしな話だと今なら思える。とても不思議な国だったのだ。多分。

ところで、劇場は、狭く、スクリーンは小さく、電車の通過音が響き渡り、映画効果音かと思ったくらいで、台詞も聞き取りにくくなる。地下の飲食店から、焼き物の臭いが漂ってきたり、換気扇の羽がこすれるような音がずっと聞こえていたりした。
小さな映画館。仕方ないとは思うが、せめて「音」くらいは対策してほしかった。
静かな劇場で、もう一度観たいものだ。

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「映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

■カヌさんへ
1000円! それは、とてもラッキーでしたね。
貴重な映画ですね。本当に。「あの時の天皇」に対する「ひとつの理解」であることに変わりないでしょう。こうして、外国人からの「理解」を示されると日本人としての「理解」を再確認しなくては…という思いに駆られてしまいます。

投稿: あかん隊 | 2006/10/23 02:20

私も1800円で観るしかないかなと
諦めてたのですが、月曜がメンズディだったので、
1000円ラッキーでした。
どういう表現が一番合うかなと考えていたのですが
『泰然自若』この言葉はぴったりですね。
脚色されてるにしろ、貴重な映画を観れたと思います。

投稿: カヌ | 2006/10/22 22:04

■悠さんへ
ご覧になれてよかったです。確かに眠気を誘う映画でもありました。(^^;)
「カリスマ」(俗に言われるものではなく)というのは、
やはり、創られるものなのですね。大勢の人(国民?)が、こうした対象を、具体的に希求しているのかもしれません。
精神のよりどころ? 八百万の神をいただいていた日本国も、「現人神」をいただいてこそ、それを礎としてまとまることができたのかもしれません。現人神、ご本人のご意向は別として。

投稿: あかん隊 | 2006/10/22 10:05

やっと見てきました(^^ゞ。
最近タイで、クーデターがあったでしょ。王様が、それを支持した、で、民衆も支持する、っていう報道されてました。
やっぱり、アジア的な、王を求める、実権をもたない王がいることによって、世の中おさまるってとこあるのかな~と思って映画みてました。
やっぱり不思議な存在ですよね、天皇。

投稿: 悠 | 2006/10/22 08:26

■マダムSさんへ
コメントありがとうございます。
イッセー尾形でなければこの映画はあり得なかったでしょう。
観賞後、不思議な気持ちになる映画には、そうめったにお目にかかれません。

投稿: あかん隊 | 2006/09/02 12:25

ご無沙汰しました! コメント嬉しかったです♪
映画、観ていらっしゃいますね♪
これは観ようかどうしようかグズグズしているうちに、近所のシネコンで水曜に観れてしまい、なんだか銀座組の方に申し訳ないような気がしてます(笑;)
 >皇后(桃井かおり)との会話のシーン
も、そう思いましたが、マッカーサーとのシーンも本当にそうであったかのようにリアリティーがあったと思いました。後の天皇の処遇から想像するに・・。
イッセーさんの一人芝居もちゃんと観てみたいです。
(TVでは拝見したんですが・・)
またどうぞよろしくお願いします~

投稿: マダムS | 2006/09/02 09:20

■ゆっこさんへ
コメントありがとうございます!
自分も、この監督さんの映画は、初めてでした。
いままで観てきた映画のどのカテゴリにも入らないような気がしました。自分の波長には、とても合いました。
考えさせる映画が好きなので。

「孤高」
確かに。300年間鎖国してでもなんとかやってきて、蓋をあければ、一所懸命背伸びをし、狂ったように戦争をして、負けた後は、経済アニマルと化し…こんな国は、他にないでしょうね。どこか、子どもチックなイメージもぬぐいきれない気がします。老練な欧州や腕力の米国からは、きっと理解されないところがたくさんあると思うし、逆もそうでしょうね。
アジアから見ても、とらえどころのない国なんじゃないでしょうか。いまは、少しはお金持っているからいいけど、貧乏な国になったら、他の国がどういう態度に出るかなぁ、と自分が死んだ後のことだろうとは思いつつ、ちょっと心配だったりします。(爆)

投稿: あかん隊 | 2006/09/01 00:16

こんばんは!
ソクーロフ監督の作品は初めて見ましたが、
予想以上に昭和天皇を好意的に描いていることに驚きました。
公式HPの監督のコメントで特に印象的だったのが
「日本人の世界は、ヨーロッパともアジアの世界とも違っている」というもの。
数年前に、たしかハーバード大の国際政治学者が
似たようなことを言っていたのを思い出しました。
「日本は孤独な国だ。
“脱亜入欧”を目指したものの、欧米からは“対等な友人”とは見なされず、
アジアからは“侵略者”として嫌悪されることになった」という。

昭和天皇は、孤独な国の“孤高の神”だったのでしょうねぇ。

投稿: ゆっこ | 2006/08/31 23:52

■ミチさんへ
天皇は人間。なのに、なぜ今も「神聖な方々」のような扱いなのか、よくわかりません。皇室の費用も、全部税金。
別に左翼ではありませんが、わからないことが多いです。
どうして特別なのかなぁ。歴代続く家系ということなら、もっと正確にルーツをたどれる家系もあるような気もします。
結局、「錦の御旗」を掲げた時代から、あんまり変わらない意識が残っているように思います。
次期総理大臣と目される方も、長州出身なんだなぁ。
「…であります」なんて物言いは、あの時代にできた「薩摩式」表現形式なのだと疑わない自分です。まだまだ、古いと思う日本の意識。良いとか悪いとか、そういうことではなくて。

若冲、機会があれば、是非!
これが江戸時代の? とびっくりするくらい、実に「具象でありながら、アブストラクトの境地」のような、「絵画でありながらデザイン」と呼べるような、すばらしいセンスと技巧に触れることができます。明治より江戸の方が、日本人、大胆だったのかもしれません。

投稿: あかん隊 | 2006/08/15 22:08

■現象さんへ
もしかして、前売券そのものが、少なかったのかもしれませんよね? スローラナーという配給会社も、今回初めて知った自分です。(恥) 公開拡大されていくといいなぁ。

投稿: あかん隊 | 2006/08/15 21:52

こちらにも・・。
日本では公開されないのかと思っていたら東京ではやっているんですね。
こういうのが日本人の手で映画化されたらどんなに素晴らしいことでしょう。
いまだに戦中のことを隠蔽しようとする動きの多い日本では当分無理かなぁ。
戦後のドイツと日本の歩みの差もえらく違いますよね。
そして「若冲」も見たいです!
これは京都にも来るんだったかな。
東京ってやっぱり遠いよ~(涙)

投稿: ミチ | 2006/08/13 14:45

映画を見る2日前に渋谷のチケットショップで券を買おうとしたのですが、
何件まわっても売っておらずそれだけ人気があるのかと不安になりつつ、
結局正規の値段で見ることになりました。
この劇場に1800円払うのはちょっとシャクですね。
たしかに、別の映画館でもう一度見たいです。

投稿: 現象 | 2006/08/13 12:52

■現象さんへ
自分は、1時と2時の回をパスして、3時の回に。
11時頃には、銀座にいたのですが、本屋さんとレコードショップとビッグカメラをうろついたら、時間なんてあっという間に。(爆)
その後、かなり疲れていたけど、頑張って上野へ。国立博物館で『プライスコレクション 「若冲と江戸絵画」展』を観て帰りました。濃度の濃い金曜日でした。

展覧会の公式サイト:http://www.jakuchu.jp/

「釣り馬鹿日誌」とか「寅さん」系映画を観るなら、ああいった劇場もシチュエーションとしては、いいかもしれませんが、この映画には、不向きです。正直、台詞が聞き取り難かったし、いくらなんでも、これはひどいと思いましたね。劇場の方には、申し訳ないですが、もう一度観たいけど、あの劇場では…と躊躇します。

投稿: あかん隊 | 2006/08/13 02:00

■Babi Kaoruさんへ
すごい映画だと思います。批判があるにせよ、一石を投じたことに間違いないでしょう。
いかんせん、上映館が限られるのが、本当に残念です。
銀座のチケットショップをいくつか覗いて、前売りがあったら…と思ったら、甘かった。どこも売り切れでした。(^^;)
1800円払う価値は、あったけど、劇場のインフラが劣悪なので、減点。係の人たちが、比較的親切だったので、まずまずかな。でもなぁ…。
靖国参拝されるのですか? 自分は、昔の仕事場がすごく近くだったので昼休みなどにもよく行っていました。(参拝ではなくて)
まともに参拝したのは、一度かな。個人的にも一回参拝しとけば、それでいいような気もします。気持ちの問題なら、気持ちはあると思うので。(戦犯などというくくりではなくて、おろかなことが二度とないように努力します、ということで)

投稿: あかん隊 | 2006/08/13 01:52

あら!
金曜に行かれたのですか。
実は僕もでございます。
ちなみに最終回でした^^ノ
なかなかまとまらず、筆が進みません…
薄っぺらくなってしまいそうで。
イッセー尾形はすごすぎるし、
作品としても個人的にはかなりおもしろかったのですが、
いかんせん劇場が…
電車の音は厳しいものがありますね。
本作の場合は地下のシーンが多くて効果音と取れなくもない…かな。どうかな。

投稿: 現象 | 2006/08/12 21:19

わぁ~、観たのですね。
昨年から気になっていたのですが日本での上映がなくて
ようやくって思ったら関東のみ先行で、先ほど場所をチェックしていたとこです。
9月には大阪でも上映されますが、そこも同じような感じの劇場で…。
靖国参拝前に観に行きます。

投稿: Babi Kaoru | 2006/08/12 17:02

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