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2006/12/16

麦の穂をゆらす風(20061215)

イギリスが日本の隣国でなくて、本当に良かった。助かった。

地理的な条件は、人為的にどうこうできることではないから、あのような国が近くにあったのでは、日本など、ひとたまりもなかったんじゃないか。

どの国も、自分たちの国益が最優先だし、それがいけないとは思わないが、国益だからと他国に意図的に内戦を誘発させるようにし向けるというのは、いったいどういう人たちなのだろう。歴史をみれば、そんなことは、山ほどある。

「個」としては、良い人だったり、知人、友人、肉親でもある関係が、「集団」としての対峙を余儀なくされると、こんなにも非情になる。非道な行いも、正当化される。そして、残るのは、いったい何だというのだろう。

キリアン・マーフィーの瞳は、どうしてこんなに印象に残るのだろう。華奢で、小柄な彼なのに、瞳の力は、観る者を圧倒する。あらゆる思いを込めた瞳が、さまざまなことを考えさせる。

見れば、まわりの風景は、自然に満ちあふれ、穏やかで素朴だ。戦う彼らの姿さえ、生活を感じさせる服装。音楽もごく控えめで、ドキュメンタリーフィルムを観るようだ。

虚しさばかりが、心に残る。

人間は、他の人間を凌駕して生きていくものなのか。優位に立つことが、すべてなのか。
彼らが、乗り越えなければならないことは、あまりにも過酷で、残酷だ。兄も弟も、どちらも間違っているように思う。では、どうすれば、良かったのか。正解が見つからない。

自分さえよければ良い。自分の国さえ、平和で豊かなら、他の国はどうなっても構わない。
先んじて、情報を操作し、国力を持ち、軍事力を持てば、この世界は思いのまま。
平服から軍服に替わった兄の姿は、「個」(微力なもの)から「集団」(「個」を消滅させる強力なもの)への変容を示していたように思う。

圧倒的な軍事力(力の論理)の前に、対等な話し合いなど望むべくもないことが事実であると実感させられた。どこもかしこも「核武装」したがるわけが、よくわかる。

限られた土地、限られた資源、限られた冨。それを自国と自国民に、と思うのは一国の為政者ならば、当然のことだし、国民もそれを望むだろう。他国を侵害(武力的にではなくても)しなければ、それを得られないとしたら、他国を侵害することもやむなし、とするのは、無理からぬことかもしれない。国民の誰が、それに反対するだろう?

人類は、もうどこにも行き場がないかもしれない。
最近は、ホーキンス博士も、「人類は別の惑星に移住すべき」と発表している。
国や宗教や人種といった、あらゆる「差」を超えた「人類」として、世の中を再構築しなければならないのかもしれない。でも、それは、とても無理だから。

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「映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

■カオリさんへ
コメントありがとうございます。
「人を分けた 神」…その「神」も、人間が作り出した、ある種の「概念」であるかと思うこともあります。人間の脳内に存在するのでしょうか? 戦いや争いは、生物としてのDNAに深く刻まれたものなのかもしれませんね。「人間らしい」というのは、どういうことなのか、考え続けています。

投稿: あかん隊 | 2007/01/18 02:19

こんばんは。人間が人間である限り争いは耐えないのかもしれません・・・
映画「バベル」の「神は、人を、分けた」と言うフレーズが頭をよぎりました。

投稿: カオリ | 2007/01/17 21:33

■ミチさんへ
IRAの、複雑な成り行きを理解するのに役立ちました。>この映画
難しいことがたくさんありすぎて、正直、困ってしまった映画でもありました。困った…と思うことがあると、懸命に「対策」を考える性格でして。<誰でもそうかも…。
この映画の場合でも、「他に方法がないだろうか」って、ずっと考えてしまって。話し合いで平和に解決する、言葉で言うほど簡単じゃないのが、リアルに感じられました。難しいことが多すぎる…。

投稿: あかん隊 | 2006/12/25 10:36

■駒吉さんへ
本当ですね。やりきれなさばかりが残ってしまいました。
俳優さんも、起用された地元の方々も、風景も…とても良いのですけれども、ローチ監督さん、「…で、結局、どうなの?」というところが、私には、よくわかりませんでした。(^^;)

投稿: あかん隊 | 2006/12/25 10:03

こんにちは♪
思いのほか早くこの映画を見ることが出来ました。
心にズシンと来ました。
いままでいろんな映画でIRAが出てきましたが、その背景はあまりに複雑で私にとっては棚上げ状態になっていたワードです。
この作品で少しはその背景が理解できたような気がして、これからIRAが出てきたらきっとデミアンやテディのことを思い出すだろうなと思います。
あっちをみてもこっちをみても暗いことばかり、
>人類は、もうどこにも行き場がないかもしれない
本当にそうですね。
私達の時代はなんとかなっても、孫の時代はどうなっているか不安です。

投稿: ミチ | 2006/12/24 11:38

いつもコメント&TBありがとうございます。
この作品は本当にやりきれない気持ちでいっぱいになりました。
他の国の人間がみてもこうなのですから、本国や近隣の国の方にはもっと色んな感情が渦巻いているんだろうな、って思いました。

投稿: 駒吉 | 2006/12/20 16:54

■現象さんへ
ユニオンジャックに赤い丸…無理。。。
それだと、日本帝国海軍の旗に似てしまいまっせぇ。>違うか…(爆)

操られているとわかった人も、きっといたはずなのに、手だてがありませんね。「目の前の悲惨な戦い」を止めるには、ああするしかなかったのでしょうか。イギリスは、アイルランド人に「殺し合え」と言っているわけですから。これ以上、無慈悲な、非道徳的なことはありません。

イギリスの良いところも認めるし、ケン・ローチ監督の勇気や存在も、この映画の公開も、国内での反発も、理解できるけど、やっぱり、贖罪しきれないことが多すぎる歴史ですよ。王様だけでなく、司教まで出張っての「植民」ですから、キリスト教も残酷だ。国も宗教も怖い。

お気になさらずに>TB間違い。気がつけば、勝手に処理しておきますので、今後は、どうぞお構いなく。(笑)

投稿: あかん隊 | 2006/12/17 02:04

もし日本が隣国だったらユニオンジャックの真ん中に赤い丸が施されたでしょうか。
ジョン・レノンの「パワー・トゥ・ザ・ピープル」を聞くたびに、
そのパワーに権力や暴力を想起してしまう今日この頃です。
人が人として平等であるということは人類の歴史から見ればつい最近の道徳観で、
まあ、それすらも有耶無耶にされている昨今ではありますが、
…って、ああ!間違えた!
今気づいたんですが「硫黄島~」のTBを送ってしまいました。
申し訳ございません。
後ほど「麦の穂~」を遅らせていただきます。
お手数ですが削除していただけると幸いでございます。
申し訳ありませんでした。
もうどこにも行き場はありませんかね。
ないだろうな。
甘受して腹をくくります。

投稿: 現象 | 2006/12/17 00:41

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