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2007/04/21

東京タワー オカンとボクと、時々、オトン

2007cinema010原作は、ベストセラー。テレビドラマは、複数製作。
母親に対する男性の心を刺激するのか、それとも…?
「売れる題材に群がる」傾向が、最近とみに顕著になっている。

キャストは、豪華だ。
頼りなげな演技ではあっても、内田也哉子の雰囲気には好感が持てるし、何より、実の親子である樹木希林との共演は、機会としてもめったにないはずだから、見逃すには惜しい。実際、若い頃の「栄子」と、ある程度年を経た「栄子」へのイメージ移行は自然だっただろう。特に「ボク」の成長過程を、それぞれ別なキャストが、比較的不自然「似ていない」ことを対比して思い出せば、より明白。

松尾スズキのシナリオ本を購入した。冒頭部分を読んだだけでも、その「ト書き」の多さに驚く。本当は、4時間を超えるシナリオを書いてしまったらしい。原作に、というよりは、ベースにある「母親と息子」に激しい思い入れが、製作側の各人にあったことを思わせる。

まずは、良い映画に仕上がっていたと言っていいだろう。(「…と思ってもらえれば」。監督もコメントしているくらいだ) 印象的なシーンの積み重ねもある。過去のシーンとの繋ぎぐあいも、さほど違和感はない。炭坑の街、寂れる故郷、東京への憧憬と現実、行き場のない不安から逃げるだけの暮らし…。そして、容赦ない時間の流れと社会の流転。翻弄されるかに見える「ボク」と「オカン」ではあっても、彼らは、案外しぶとく、変わらないものを保持し続けているように見える。それは、正誤の如何に関わらず、見る者にとっては「愛情」にもみえるし、「親子の繋がり」のようでもあり、「甘え」でも「甘やかし」でもあると受け取れる。

しかし、「ボク」が「これではいけない」と気づく要因が、あっさりし過ぎていて、それほど「自堕落で救いようのない生活」を送っていた、という印象が希薄だ。「道徳」「倫理」などの「規範」に神経質になっている現状を意識したのだろうか? ごく普通の家庭にあっても、親子の葛藤は少なからずあるものだ。息子でも娘でも、その中身が異なることはあっても、「親に対する複雑な思い」というのは、同じなのではないだろうか?

原作は未読であるし、ドラマも知らない。だから、というわけではないが、これが、特別なストーリーとは思わない。誰だって(常識的な範疇で考える場合には)、自分の親が年老いたなら、できるだけのことを…と思っているに違いない。それは、何も「親不孝をしてきたから、その償いに」ということではなく、親孝行している人たちでさえ、そう思っているのだと考える。

日頃は、自身のことばかりで、しばし親のことを忘れていた…、とそんな「気づき」へのインスピレーションには、なるかもしれない。

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「映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

■とらねこさんへ
ご無沙汰です。TBとコメントをありがとうございます。
>シンプルだから、いろんな人の心の琴線に触れる
確かに。そういう意味では、俳優さんたちも比較的押さえた演技だったように思います。スタッフにも、キャストにも、いろんな思いが浮かんだ映画だったかもしれませんね。

とらねこさんの涙は、どんな涙だったのかしら。

投稿: あかん隊 | 2007/06/21 03:15

あかん隊さん、こんばんは♪
ご無沙汰しております。
この作品、なんでこんなに涙が出るんだ~っていうほど、泣きまくってしまいました。
もう、「キサスキサス」なんて、やばかったです。
ひくっ、とか言いそうに・・・。

この話、人それぞれの琴線に触れるんですよね。
エピソードはきっと、絞って、あっさりした描写になっていたようにも思うのですが、そのシンプル物語だったからか、余計に、人が自分のことい当てはめやすくなっているんでしょうね。

投稿: とらねこ | 2007/06/20 19:29

■現象さんへ
現象さんには、ちょっと辛い映画なんじゃないかって、勝手に思っていました。母親の立場で、これを観ると「ありがとうね」と言いたいのは、こちら(母親)の方なんです。
子どもは、親が思う(希望する)ほど、聖人君子でも淑女でもないわけで、ずっこけもするし、脱線もする、それでも、「子どもを持つ母親」になれたことが、だた女性として生きてきた自身を大きく変えたし、変えてきたし、多分、死ぬまで、ずっと「母親」でいることができる(そのように自身を、ある意味制約する)ことは、女性の一生にとっては、とても大きなことのひとつでもある、と思うんです。<わかりにくいゾ
共存共栄…というと語弊がありますが、呼応しあって、お互いに成長していく親子関係であれ、と希望してます。

親(母親)として観た、この映画、私には、丁度似たような(?)状況もあるので、現象さんとは違った意味で、少々イタイものでした。(爆)

投稿: あかん隊 | 2007/05/16 01:36

>「道徳」「倫理」などの「規範」に神経質になっている現状

なるほど! そうかもしれません。
たしかに希薄でしたね。
超拡大もので多くの層に受け入れられるため、
そういう作りになったのかもしれないですね。
テーマは普遍的なものだし。

投稿: 現象 | 2007/05/15 12:33

■こーいちさんへ
こちらこそ、TBとコメントまでありがとうございます!
思い出すと印象的なシーンが、たくさんありましたし、なんとなく「安心(?)」して観ていられた気がします。観る人によって、いろいろ考えることがありそうですね。忘れている感情を揺り動かす映画だったかもしれません。

投稿: あかん隊 | 2007/04/28 22:58

あかん隊さん、こんにちは♪
コメントありがとうございました!
>「気づき」へのインスピレーションには、なるかもしれない。
ほんと同感です。
映画自体の色を薄くすることで誰にでも共感できるものになってましたよね。
作品自体というより、親への感謝だとか思いやりの気持ちを思い出させてもらったという部分で心が温かくなった気がしました。

投稿: こーいち | 2007/04/28 16:35

■ふる さんへ
初めまして。コメントをありがとうございます。
監督も、脚本の松尾氏も「おじさん世代に観て欲しい」とコメントしているそうです。東京というところは、何世代にも渡って住み着いている人たちより、地方出身者の方が多いのではないか、と思います。
東京に出てきたけど…という人たちや高齢になる親への思いを見つめ直すきっかけになる映画であれば、それだけでも成功、と言えるかもしれませんね。

投稿: あかん隊 | 2007/04/23 23:18

はじめまして。
ミチさんの時効警察から流れて来ました。
原作を読んだだけなのですが、
気づきのインスピレーションを与えてくれるだけでも、
いい作品なのかも知れません。一度見たら終わりの
一過性の作品が多い中では。

戯言にて失礼致します。

投稿: ふる | 2007/04/23 20:24

■悠さんへ
確かに。
「社会性」「プロット」「個人の感情」は、良い映画には必須でしょう。それと、舞台演劇でも感じることですが、喜劇でも悲劇でもない、「おかしみ」のようなものが、自然に、ふっと感じられることって、作品の魅力になるのではないでしょうか?
「社会性」は、中途半端に終わっていたようです>今作。
「プロット」も、感情のピークをどこへ持って行くつもりなのか、定かになりませんでしたし、行きつ戻りつする現在と過去のシーンに紛れてしまいました。「運命じゃない人」は、前半と後半で、視点をきっちりわけてみせていましたから、前半のまどろっこしさにも意味があったのだ、と後半を見て納得できたと思います。構成力と脚本の勝利でしたね。今作は、少なからず「思い入れ」も大きかったようなので、盛りだくさんになってしまったかも。そういう意味でも、「コンセプト」は絞っても、よかったのではないでしょうか?

>家族を東京へよぶしかない
そうですね。地方と都会の格差が広がっていく、最初の頃だと思います。(炭坑の閉鎖などで) ともなれば、仕方のない選択ですし、そうした方々も多かったのではないか、と想像します。

投稿: あかん隊 | 2007/04/22 02:22

■ミチさんへ
そうですね>改心するきっかけが弱い。その通りだと思います。
栄子さん、もっと「明るくて、おちゃめ」な部分の多い方だったらしいですから、そういう部分も含めて、メリハリをつけるとよかったんじゃないか…なんて、素人が思います。(^^;)
オダギリくん、良い演技をしていました。雰囲気は、リリー・フランキーさんにとても近かったように思います。彼自身、いろいろ思うこともあっただろうって、想像しうる演技でした。

投稿: あかん隊 | 2007/04/22 02:07

いい作品は、社会性、プロット、個人の感情のせめて2つがしっかり描かれていることとおもってるおいらには、プロット+社会性がすこし、足りない気がしますが。社会性など関係ない「運命じゃない人」は、プロット、個人の感情がうまかった、とおもってるんですが、どうでしょ。
>フツーのダメなあんちゃん
が東京へでてくる、(田舎じゃいきられない)、生活できるようになると、田舎へ帰るのではなく、家族を東京へよぶしかない、ってな、とこが、共感をよぶと思うのですがいかがでしょうか。あ、これ、男が東京へでてきたばあいですけど。


投稿: 悠 | 2007/04/22 01:41

こんにちは♪
皆が大絶賛するほどの作品かといえばそうでもないような気がします。
「気付き」へのインスピレーションを促したという意味でみんながそれぞれ「良かった」と思っているのではないかしら。
私がいまひとつかなと思ったのは、ボクが改心する所のきっかけと、多大な借金を返すのに11年かかっているのにそれがあまり感じられなかったことと、オカンのキュートさがあまり出ていなかったことかな。
あのオカンきっとオトンが惚れたくらいだから田舎にしては結構キュートな魅力のあった人なんじゃないかしら。
とはいえ、いたってフツーのダメなあんちゃん→ギョーカイ人(?)を演じたオダジョーには「はなまる」をあげたいんです(笑)

投稿: ミチ | 2007/04/21 16:59

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